[2005 / V2]
中学生の頃、地元の図書館でデビュー・アルバムを借りた瞬間からロン・セクスミスが大好き。運良く同じ野外フェスに出演することになった時は狂喜乱舞し、ロンセクを観るためにバンドメンバーを巻き込んでわざわざ前乗りした程です。
そのロン・セクスミス、1995年のメジャー・デビューから数えると20年で13枚のアルバムをリリースしており、中々の多作家と言えます。ファンとしては嬉しい限りですが、ではこれからファンになる人はどれから聴けば良いのか?これが中々の難問です。
デビュー作はもちろんのこと、
ボブ・ロックが手がけた2011年作もキャッチーだし、
ホーン・セクションをキューバで録音した2008年作も最高。
しかし最もロン・セクスミスのソングライティング力を味合うことができるのは、旧友のドラマー、ドン・カーと連名で発表したこの”Destination Unknown”なのかもしれません。
ロン・セクスミスが「デモのつもりで」簡単に録音したトラックに、ドン・カーをはじめ気心知れたツアーメンバー達が様々な楽器を重ねて作り上げれた作品。プロデュースもドン・カー名義になっています。テンポを定めていないようなデモトラックにダビングするのは大変難儀なのですが、特にドン・カーは80年代からロンと活動を共にしているだけあって、まるで同時に録音したかのように気持ちのよいグルーブです。
ヘロンのような木漏れ日フォークの雰囲気や、ニッケル・クリークに代表される90年代以降のブルーグラスの空気も醸しつつ、マルチプレイヤーであるドン・カーならではのバランスの取れたアレンジが光ります。シンプルな音像だからこそロン・セクスミスの楽曲の魅力が詳らかにされています。キンクス大好きなだけあって、情景の浮かぶ歌詞も素晴らしい。
さて、この原稿を書いている間に、ロン・セクスミス2年ぶりの新作リリースが発表されました。
14枚目のアルバム”The Last Rider”はロン・セクスミスとドン・カーの共同プロデュース。ツアーメンバー全面参加ということで、俄然期待も高まります。数曲公開されていますが、期待に違わぬ出来。楽しみです。