Doris Abrahams “Labor of Love”

[1976 / Philo ‎– PH 1034]

顔ジャケとしてのインパクトは、一部ではクリムゾンキングの宮殿と並んで語られる程…と言うのは冗談にせよ、裏ジャケの彼女はもっと美人なのでご安心を。しかしこのジャケットが災いし(たのかどうかは知らないが)、現時点での彼女の唯一作。

ウッドストックの良心・トラウム兄弟の弟アーティがプロデュースを手掛けたことから、ウッドストック産の隠れた名盤とも称される当アルバムだが、実際の録音はお隣バーモント州はフェリスバーグ。とは言え本家ウッドストックからは車で3時間程の距離であるから、大きく分ければウッドストック産と言える。

主役のドリスはボーカルとギターのSSWスタイル。脇を支えるミュージシャンは、グレート・スペックルド・バード/ハングリー・チャックの鍵盤奏者ジェフリー・ガッチェオンや、70年代後半のウッドストックを支えたギタリスト、アーレン・ロス。リズムやホーンセクションにはスティーブ・フォバートやデビッド・ブロムバーグ界隈のミュージシャンが顔を揃えており、このあたりはさながら新世代フォークロック・ミュージシャン名鑑とも呼べるかも。勿論アーティの盟友、パット・アルジャーもアコースティックギターと作曲で華を添える。

そのパットアルジャーと思しきカッティングからアルバムはスタート。作曲もアルジャーで。後年にリリースされたアーティとの共作を思わせる出来栄えだ。北国で録音したとは思えないほどのホーンセクションの活躍っぷりではあるが、ドリスのか細いボーカルがウッドストックらしさを担保している。

ベストトラックはゴフィン=キング的バラードA2″Hurricane In My Heart”。ジェフリー・ガッチェオン面目躍如のピアノが大活躍。ドリスのボーカルとの相性も良い。こちらも作曲はアルジャー。本作はとにかくアルジャーのペンによる楽曲の出来栄えが素晴らしく、アーティのプロダクションとの相性の良さを感じさせる。全体的にリズム・セクションが軽い点で好き嫌いが別れるところだが、かつてのナッシュビルから連綿と紡がれてきたポップ・カントリーの系譜として、素晴らしい出来栄え。アーティ・トラウムの70年代後半における良い仕事の一つ。

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